生まれ持った星〜妻の宿命:【エッセイ】夫婦の会話

生まれ持った星〜妻の宿命


お昼休みに散歩がてら近くのスーパーに行った。

昨日の夜には、明日こそ、冷麺を買いに行こう、と言っていた妻。
ここ1週間くらい妻は冷麺を食べたいと言っていたから、今日こそチャンスと思っていたみたいだ。

もともと私は、妻が冷麺を大好きなのは知っていたから、スーパーのどの位置に冷麺が陳列されているかもしっかり記憶していた。

冷麺が陳列されている棚の前に立って、「ここだよ」と少し誇らしげに言う私。

時期的にもうないかもしれないとの思いもあったけど、棚いっぱいに冷麺は並んでいた。

手にとって一安心。
買えてよかったと思うのは、私だけではないはず。
というのも、妻にはたまにおもしろい出来事が起こる。

たとえば、こんなこともあった。私が1人で行ったときには普通に営業していたお店が、妻を連れて行ったらすでに閉店していたとか。
妻がどうしても食べたくなったお菓子を、どこで買えるかネットで調べていたら、製造中止になっていたとか。

だから、今回はよかった〜、とこころ軽やかに買い物をしていた矢先のこと、
「あれ? これって?」と言って、妻は冷麺の袋に書かれている賞味期限を見ている。

「え?  賞味期限切れてるじゃん!」
私はとっさにその袋を手にとって、目の前にいる店員さんに駆け寄っていった。

「あの、これ、賞味期限切れてるみたいなんですけど」

こんな言葉を言ってみたものの、この冷麺が買えなくなってはまずい。

そんな思いがよぎった瞬間に
「棚にたくさんあったけど、みんな賞味期限切れてるんでしょうか? 賞味期限切れてないのがあれば…」と、すでに陳列棚に向かって歩き出している店員さんに言葉を投げかける。
私の声が聞こえていたかはわからないが、私も一緒についていった。

店員さんは、棚に並べてあった冷麺の賞味期限を一つ一つチェックしては、腕の中に冷麺をどんどん抱え上げていく。

「全部ダメですか?」
「この冷麺を買うためにきたんですけど」

「すみません」

店員さんも、申し訳なさそうに言うのだが、

「売ってもらうことはできないですか?」

と私もほんの少し食い下がってみた。

もちろん、答えは、ノー。
そんなのこの日本で許されるはずがない。

マジかーー笑
今回はうまくいった、と思ったのもつかの間。やっぱり運命は変えられないのか。生まれ持った星とも言える。

スーパーからの帰り道。ケロッとした顔で妻は言う。

「こんなこと、普通あっちゃいけないんだよ」

学生時代はスーパーでアルバイトをしていたからか、スーパーの裏事情みたいなことにも詳しいようだ。

そういえば昨日、市役所に行った。e-Taxを使って確定申告をした妻は、なぜか、税務署からマイナンバーカードの住所登録に関してエラーが出ていますと連絡をもらっていた。

市役所に行ってわかったことだが、結局は、事務作業におけるちょっとしたミスが原因だったことがわかった。

窓口で担当してくれた方は、「これはあってはならないことなんです。誠に申し訳ありません」と、丁重に謝ってくれたみたいだ。

ちょっとしたミスは誰にでもあるからと、妻はまったく意に介している様子もなく、窓口の担当者との会話は、なんだか笑い話をして盛り上がってるかのように聞こえた。

「立て続けにこんな状況に出くわすって、遺伝子?」

買い物から帰る途中で、私はまた適当なことを言ってみたけど、こんなことも妻の宿命というものだろうか?

はたまた、私こそ妻には負けない宿命を背負っているかもしれない。こんな日常を書かずにはいられないのだから。





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